Apple系アイテムの中でおそらく最も影が薄いのが「AirTag(エアタグ)」。
家の鍵・お財布・バッグ等に取り付けておけば、万が一にもそれらを紛失した時に、AirTagを頼りにしてすぐ発見することができるようになります!
紛失物の捜索にはかなり役に立つ一方、自動車窃盗対策や子供の追跡に使おうと思っている方は少し検討の余地ありかも…。
Appleの影薄アイテム「Air Tag」レビュー
Appleといえば数多くのデバイスが有名ですが、ひっそりと発売されている「Air Tag(エアタグ)」をご存じでしょうか。
直径31.9mm×厚さ8mmというスモールサイズの本体を、家や車の鍵に付けたり、財布やバッグなどに入れたりしておけば、万が一にでも紛失した時に、「AirTag」を頼りにして簡単に見つけ出すことができるようになる!というシロモノです。
位置特定のための機器ですが、「AirTag」ではGPSを使用せず、Bluetooth接続によって付近のAppleデバイス(AppleやiPadなど)と接続し、それらのデバイスの位置情報を利用することでAirTagの位置情報を特定させる仕組みです。
オンライン主流の世界ですが、ある種人と人のつながりというオフラインの力を得て持ち物を発見しやすくする画期的なアイテムだと感じました。
スペック
- サイズ:直径39.1mm×厚さ8mm
- 重量:11g
- 電源:CR2032リチウムコイン型電池
- 接続:Bluetooth、Apple製U1チップ、NFCタップ(紛失モード)
- 防塵防水:IEC規格に基づくIP67等級(粉塵の侵入に対する完全な保護、水深1mで30分間の水没に対する保護)
- 内蔵スピーカー(検出時にサウンドの鳴出)
- 加速度センサー
- システム条件と互換性:Apple ID、iOS14.5以降を搭載したiPhone、iPadOS14.5以降を搭載したiPad
- 動作環境:-20〜60℃
- 材質:ステンレススチール、プラスチック樹脂(BFR・PVC・ベリリウム・水銀不使用)
見た目は缶バッジや碁石のようにも見え、500円玉より一回り大きいくらいのサイズ感です。
使い方
「AirTag」は、失くしやすい持ち物と一緒にして携帯しておくことで、紛失時に発見しやすくするためのものです。
例えば、お財布やバッグなどの中にAirTagを入れておいたり、キーホルダーで鍵と一緒に持ち運んだりしておけば、それらの失くしやすい物たちをもしも紛失したとしても、AirTagの位置情報を辿ることで失くした場所を特定することができるのです。
iPhoneとの接続・登録方法
iPhoneの「探す」アプリから登録します。
AirTagを購入した時に巻かれている保護フィルムを剥がすと、AirTag回路の電流が流れるようになりスイッチが勝手に入ります。
「探す」アプリを開いた状態でAirTagを近づけると、接続するためのポップアップが出現するので、これに従って「AirTagの名称設定」「絵文字選択」「注意点の確認とApple IDの利用の同意」を経て登録となります。
あとは財布やバッグやカギなどと一緒にして持ち運ぶだけでOKです!
AirTag位置の確認方法
「探す」アプリで「持ち物を探す」アイコンから、AirTagの名前を選択すると、地図上に位置が表示されます。
他にも、ピロピロピロピロというビープ音調のサウンドを鳴らしたり、マップアプリを利用してAirTagまでの経路案内を表示させることもでき、発見しやすくする工夫が施されています。
電池の交換方法
バッテリーである電池は交換後から約1年間もつとされています。
「探す」アプリで目的のAirTagを選択すると、バッテリー残量が少なくなっている場合にはAirTag名の下に「バッテリー残量低下」の表示が出ます。これが出てきたらそろそろ電池を交換しましょう。
シルバーの金属部分を白い本体に対して反時計回りに回転させると、パカッと蓋のように外すことができます。
CR2032タイプのリチウムコイン電池をはめ込むだけの簡単設計なので、簡単に交換することもできます。
ちょっと分かりにくい「紛失モード」
Appleの公式サイトの説明を読んでもイマイチぴんと来ない「紛失モード」ですが、簡単に言うと、AirTagとそれを入れた持ち物を紛失してしまった時に、失くした後で「紛失モード」を有効にすると、AirTagを拾った人に現在紛失中であることを知らせることができるモードです。
「探す」アプリの「持ち物を探す」アイコンから目的のAirTag名を選択し、下にスクロールすると紛失モードの欄があります。ここをタップして有効にするだけなのですが、この時に電話番号もしくはメールアドレスを登録すると、発見者に向けたメッセージを残すことができるようになります。
この「紛失モード」を設定しておくと、AirTagを発見した人がタッチ決済のようにiPhoneを近づけると、NFC通信(近距離無線通信)を介してiPhone側にブラウザリンクが表示され、そのリンクを開くと持ち主と連絡をとるための情報(電話番号orメールアドレス、AirTagのシリアルナンバーなど)が表示されるようになります。
この情報を使って、紛失した持ち物の発見者が持ち主に連絡をする、という流れです。
置き忘れ防止の「通知機能」
「手元から離れた時に通知」の機能をオンにすると、AirTagとBluetooth接続されているAppleデバイス(iPhoneなど)のどちらかが接続範囲外になった瞬間に通知が届くようになります。
持ち物の置き忘れを防止するための機能です。
位置情報の精度
AirTagはGPSのように衛生通信やそれ自体が位置情報を発信するものではなく、「Bluetooth」通信とiPhoneなどの「Apple製品の位置情報」とを組み合わせたものとなっています。
つまり、目的の「AirTag」と、その付近にあるiPhoneなど「Appleデバイス」とをBluetooth通信で接続し、そのAppleデバイスの位置情報をインターネット経由で把握することで、AirTagの位置がどこかを検出するというものです。
AirTagの位置検出の精度についてですが、数mの誤差はありますが、概ね正しい位置で表示されています。
ただし位置情報の更新のたびに、AirTagが瞬間移動したかのように10m以内の範囲でヒュンヒュンと位置が変わる現象が見られることがあります。
これはAirTagとBluetoothで接続されるAppleデバイスがその都度変わることで起きる現象だと思われ、近くに行ったは良いものの、なかなか探し当てることができないという状況も考えられます。そういった場面のために、前述のサウンドを鳴らす機能などが付随していると考えられます。
一般的にBluetoothの有効範囲は10m以下(8mくらい)と言われています。
おそらくAirTagの周囲10m前後内に存在するAppleデバイスが多くなればなるほど、その精度は向上すると思われるので、都会などの方がより正しく位置表示されるかと思います。
注意点
電池の残量には注意
電池残量を表示する方法はありません。
その代わり、残量が低下してきた時にのみ、前述のように「探す」アプリで表示されるようになっているため、それを目安に電池交換するというのが最適な方法です。
大事な時にバッテリー切れを起こさないよう、こまめに残量低下の表示が出ていないかを確認しておくと良いです。
キズや汚れがつきやすい
AirTagの材質は、鏡面シルバーの方はステンレススチールを用い、裏面はプラスチック樹脂を採用しています。
ステンレスの方はちょっとした擦過でキズが残りやすく、プラスチックの方も色が白ということもあって汚れが目立ちやすいです。
100均などにもケースが販売されているので、末長くキレイに使い続けたいのであればそういったケースを利用した方が良いです。
愛車の盗難対策には難しいかも…
そもそも発見されやすいように設計されている
そもそも落とし物の発見や置き忘れを防止するためのアイテムであることから、AirTagの存在を知らせる機能が盛り沢山なのです。
AirTagが、登録してあるAppleデバイス(例えばiPhone)のBluetooth範囲外に出ている状況下で一定時間経過し(放置され)、新たにAirTagが別の未登録のAppleデバイスと接続され、その位置情報が変わる際にサウンドが流れるようになっているそうです。また、加速度センサーも影響しているのか、登録しているiPhoneであっても、AirTagのみを持ち上げた際にサウンドが鳴り出したこともあります。
これにより、例えばAirTagが取り付けてある落とし物のバッグを見つけた善良な発見者が、交番に届けようと思って拾い上げた瞬間や歩き出した瞬間にサウンドが鳴り出し、バッグの中にあるAirTagを発見しやすくしています。
紛失物が持ち主の元に返却されやすくするための機能としてはとても優秀ですが、一方で、自動車にAirTagを隠している場合では、当然所有者のAppleデバイスのBluetooth範囲外にAirTagがある状況なので、出発した時点でサウンドが鳴り始める可能性もあり、耳の良い窃盗犯には気付かれてしまう可能性もあります。
ストーキング対策機能(セーフティ通知)が追跡用途(盗難防止)と逆行する
AirTagはその特性上、ストーカーに悪用されることが容易に想像できます。
例えばストーカーが悪意を持って、目星をつけた人の荷物にAirTagを紛れ込ませることで住所を特定したり、自動車窃盗犯が目的の自動車にAirTagを貼り付けることで所有者の住所を特定したりできてしまいます。
こういった悪用される状況はAppleサイドも想定しており、iPhoneが未登録のAirTagに近づき、一定時間(明記されていませんがランダムに数時間単位で変わるようです。短すぎるとたまたま同じ場所にいただけで通知が届いてしまうため)同じ範囲内で移動した際に、不審なAirTagが身の回りにあることを知らせる通知が届くようになっています。
このセーフティ通知機能は、ストーカーなどの被害に遭わないようにするためには必須の機能なのですが、自動車盗難や子供などの追跡で使おうと思った時に、この機能があることで追跡相手にAirTagの存在が容易にバレてしまいます。
ちなみに、セーフティ通知機能による不審なAirTagの存在が通知された場合は、ご自身の持ち物の中身を探してAirTagが紛れ込んでいないかを確認し、発見した場合は前述のように中のコイン型電池を抜き取ってしまえばAirTagを無効化することができます。
付近にAppleデバイスが無いと通信できない
また、もしも盗難車の一時保管場所であるコインパーキングに到着するまでにAirTagの存在がバレなかったとしても、AirTagを設置した自動車の近くにAppleデバイスを所持している人が存在しない状況だと、AirTagの位置を同定することができなくなりますし、Appleデバイスがあったとしても位置情報の設定がONになっていないと位置を拾えません。
例えば、近くにiPhoneを所有した人が来ないような山奥に駐車されてしまったり、Apple製品のユーザーが極端に少ない地域などの場合は、「AirTag」は機能を全く発揮できなくなってしまいます。
落とし物が動かない前提での設計のため、リアルタイムの「追跡」には不向き
そもそもAirTagを発見する仕組みは、目的の「AirTag」と、その付近にあるiPhoneなどAppleデバイスとをBluetooth通信で接続し、そのAppleデバイスの位置情報を把握することで、Air Tagの位置がどこかを検出するというものです。
この位置情報の通信はGPSのようにリアルタイムで動くものではなく、何分かごとに更新される仕組みのため、落とし物のように位置が変わらずにずっとその場に置かれているような状況を想定して作られていることが分かります。
そのため、車や人など移動しているものを追跡しようと思ったら、「現在地」と「最新の位置情報」の間にはラグが生じてしまいます。
車の場合であれば駐車中など、ある程度の時間を同じ場所で動かない状況であれば正確な位置情報を知ることができますが、移動を頻回に繰り返している場合には、位置情報の信頼性が乏しくなってしまいます。
ただし、工夫をすれば追跡装置として使えなくも無い
上記のような、追跡デバイスとして使用するにあたって障害となる部分の対策をすれば、一応愛車の盗難防止にも役立たせることができるかもしれません。
例えば、AirTagの存在が未登録のiPhoneに通知される前に、盗難された自動車の位置を把握すれば良いので、こまめに位置情報をチェックするとか、
サウンドが鳴っても聞こえにくくするために防音素材の何かで厳重に包み込むとか、
あるいは例えサウンドを鳴らされたとしても発見されにくい場所(走行中に取り外すことができないトランク内やタイヤのフェンダー部、フロアマットの下など)に置いておくとか、
あるいは単価がそこまで高価でないので、発見されることを前提として、車内と車外に3〜4個設置しておくなどすると良いかもしれません。
(ただしApple製品お得意のアップデートにより、機能に関しては少しずつ変化していく可能性も高いと思われます。)
まとめると、AirTagの場合は、盗難の心配はそんなに必要ないけれど、もしものお守りとして車に載せておきたいという方にはピッタリかと思います。
一方でGPSと比較すると発見されにくさや追跡性能なども劣るので、絶対に盗難させたくないという方は、AirTagではなく、ケチらずにGPS機器を購入した方が良いでしょう。
子供の「見守り装置」として安全のための追跡はどうか?
お子さんがiPhoneなどの携帯を持っていれば、その位置情報を拾って簡易的な「見守り装置」として利用することは有用かもしれません。
ただしお子さんにiPhoneなどを持たせていない場合で、人気のない場所に行ってしまった時には追跡することができませんし、ある程度位置の誤差があることは承知しておく必要があります。
さらに、お子さんに内緒で取り付ける場合、もしもお子さんに気づかれてしまった場合には不信感を抱く原因となるため、親子の信頼関係を壊さない範囲での使用を検討しましょう。